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使徒行伝は13章から、大きな転換点を迎えます。これまでの舞台だったエルサレムを離れ、福音が「地の果てにまで」広がっていく新たな段階――世界宣教がここから本格的に始まるのです。そして、その出発点となったのが異邦人地域にあるアンテオケ教会でした。
この教会は、多様性と一致を兼ね備えた、非常に霊的に成熟した群れでした。預言者や教師といった霊的な指導者が与えられ、日々主を礼拝し、断食し、熱心に祈る共同体でした。そこに集っていたのは、資産家のバルナバ、アフリカ出身のシメオン、北アフリカ・クレネのルキオ、ヘロデ王と育てられたマナエン、そしてかつて教会を迫害していたサウロ(パウロ)と、実に多彩な顔ぶれでした。彼らは出自も国籍も異なる中で、主にあって愛と一致を保ち、真理に仕えていたのです。
ある日、彼らが断食と祈りをもって主に仕えていたとき、聖霊が語られました。「さぁ、わたしのためにバルナバとサウロを聖別し、わたしが召した働きに就かせなさい」と。その召命に対し、教会はさらに断食し、祈り、二人の上に手を置いて、喜んで送り出しました。最良の人材を手放すことを惜しまず、福音のために捧げたアンテオケ教会の姿勢は、今日の私たちにも大きな模範を与えてくれます。
すでに、サウロは回心してから十年以上、タルソやアンテオケでの準備期間を経ており、バルナバもまた整えられた人物でした。二人は聖霊に導かれ、セルキヤへ下り、船でクプロ島へと渡って行きます。最初に訪れたのはサラミス。そこではユダヤ人の会堂で神の言葉を語り始めました。同行していたのは、マルコと呼ばれるヨハネでした。彼はこの後、旅の途中で二人と別れエルサレムへ帰ってしまいます。彼の心に何があったのか、聖書は多くを語りませんが、若さゆえの葛藤や不安があったのかもしれません。
彼らは島全体を巡り、やがてパポスという町に至ります。そこにはセルギオ・パウロという地方総督がいました。聡明な人物で、バルナバとサウロを招き、神の言葉を熱心に聞こうとします。しかし、そこには「まじゅつ師」エルマ、別名バル・イエスという偽予言者がいて、総督の心を惑わせ、伝道の妨げとなっていました。
そこでパウロは、聖霊に満たされ、厳しく彼を戒めます。「あらゆる偽りと邪悪に満ちた悪魔の子よ。主のまっすぐな道を曲げることをやめないのか!」と。そして神の力により、エルマは一時的に盲目となり、手を引いてくれる人を探し回ることになります。
この出来事を目の当たりにした総督セルギオ・パウロは、主の教えに驚き、信じる者となりました。こうして、アンテオケ教会から祈りと献身をもって遣わされた福音の働きは、確かに地の果てへと歩み出していったのです。
城尾マコト牧師