● ヨセフの生い立ち

 ヨセフはヤコブとラケルの間に生まれた息子で、特別に愛されていました。ヤコブはヨセフのために美しい衣を作りましたが、それが他のお兄さん達の嫉妬を招きます。さらに、ヨセフが見た夢、「お兄さん達の麦束が自分の麦束におじぎをした」と話したことで、兄弟たちの怒りはますます募りました。

「まさか、おまえが私たちの上に立つつもりか?!」兄たちはそう言い放ちました。

この夢は神様から与えられたものでしたが、兄弟たちにはその意味が理解できませんでした。その結果、ヨセフは兄弟たちにより商人に売られ、エジプトに連れて行かれました。

エジプトで奴隷としてポティファルに仕えたヨセフの働きは、神様の祝福によって成功しました。しかし、ポティファルの妻による嘘の告発で牢屋に入れられる試練を経験します。それでも、神様は彼を見捨てず、獄屋番に信頼される立場に導きました。さらに、王の料理役と給仕役の夢を解き明かしたことで、エジプトの王パロの夢を解き明かす機会が与えられ、国全体の飢饉に備える役目を託されました。

神様のご計画により、ヨセフの人生は試練を通して形成され、最終的にはエジプト全土の危機管理を任される立場に導かれたのです。このメッセージでは、飢饉の中でヨセフと兄弟たちがどのように再会し、神様の計画が進むのかを見ていきます。

● お兄さんとの再会

 神様の示された通りに7年間の大豊作が終わると、次は大豊作であった事を忘れてしまう程の大飢饉がやってきました。聖書では7年間の大豊作と大飢饉はエジプトに限定されるとは書かれていません。7年間の豊作はエジプト以外の地域に及んだのかはわかりませんが、少なくとも飢饉の影響はエジプトを含む周辺の全地に及んでいたのでしょう。

飢饉の影響はヤコブ達の住むカナンの地にも及んでいました。彼らはこの飢饉はいったいどうしたことだろうと頭を悩ませていたことでしょう。そんなとき、行商人などの他の地域を行き来する人から話を聞いたのでしょう。この飢饉の中でもエジプトには食料が溢れていると知る事になりました。

「お前たち、なにをボサっとしているんだ。エジプトで食料を買ってきなさい。」

こうして10人の兄弟がエジプトへ向かいました。ただし、末っ子ベニヤミンは連れて行かせませんでした。ヤコブにとってヨセフを失ったことは大きな悲しみであり、ベニヤミンを失うことは絶対に避けたかったのです。

エジプトでヨセフは兄弟たちが来たことを知ります。創世記42章の6節から7節を読んでみます。


ときにヨセフは国のつかさであって、国のすべての民に穀物を売ることをしていた。ヨセフの兄弟たちはきて、地にひれ伏し、彼を拝した。 ヨセフは兄弟たちを見て、それと知ったが、彼らに向かっては知らぬ者のようにし、荒々しく語った。すなわち彼らに言った、「あなたがたはどこからきたのか」彼らは答えた。「食料を買うためにカナンの地からきました」


もうひとつ、創世記37章の7節を読んでみます。


わたしたちが畑の中で束を結わえていたとき、わたしの束が起きて立つと、あなたがたの束がまわりにきて、わたしの束を拝みました


ここで神様がヨセフに示された夢の通り、お兄さん達がヨセフにひれ伏しました。神様の計画がひとつ成就しました。

● お兄さんたちの試練

ヨセフは兄弟たちを見たとき、若い頃売られてエジプトに連れてこられた事、さまざまな感情が押し寄せてきました。しかし、まだ全ての夢が成就していません。

創世記37章9節を読んでみましょう。


ヨセフはまた一つの夢を見て、それを兄弟たちに語って言った「わたしはまた夢を見ました。日と月と十一の星とがわたしを拝みました」


ヨセフは自分の気持ちを隠してわざと荒々しくこう言いました。

「あなた方はスパイだ。この国の隙を伺うために来たのだろう!?」

ヨセフは神様の導きに従い、この夢が成就するために兄弟たちを試す必要があると確信しました。彼の厳しい態度は、神様から託された使命を果たすための意図的な行動でした。

「わたしたちは12人兄弟です。末の弟はカナンでお父さんと一緒にいます。もう一人はいなくなりました」

疑いを掛けられると思っていなかったお兄さん達は信じてもらおうと必死に答えます。

ヨセフは言いました。

「では、あなたがたを試してみよう。末の弟を連れてきなさい。そうすれば解放しよう」

ヨセフは彼らに過去を振り返り、悔い改める時間を与えるため、三日間、監禁所に入れました。

「確かにわたしたちはヨセフに酷い事をした。あの子が必死に助けてと願っていたのに」

それを聞いて長男のルベンは弟たちを𠮟りつけました。

「だからヨセフに手を出すなといっただろう。それなのにお前たちは。だからあの子の報いを今受けているんだ」

ヨセフはこの会話を聞いていましたが、お兄さん達はヨセフとの間に通訳者がいたので話の内容が理解されているとはおもっていませんでした。

知らないふりをして聞いていたヨセフはその場所から離れて1人になり泣きました。

● ヤコブの葛藤

 彼らの中でシメオンがエジプトに残らせられ、残りの兄弟は袋の中に食料や帰り道の食料を入れて帰らせられました。

「おい、食料を買った銀が入っているぞ」

帰り道の宿でロバに餌をあげるために袋をあけると、中から銀が出てきました。

「なんてことだ、支払ったはずの銀がある。何故、神様はこのような事をされるのだろう」

なんと言い訳をすればよいのだろう。きっと罰せられるに違いない。彼らは恐ろしくなりました。

家へ戻るとヤコブに起った事を全て話しました。スパイとして疑われた事、シメオンがエジプトに囚われた事。ベニヤミンを連れてこいと言われた事。支払った銀が袋の中にあったこと。

ヤコブは話を聞いて怒りました。

「おまえたちはわたしの子供を失わせた。ヨセフもシメオンもいなくなった。今度はベニヤミンも奪おうと言うのか?」

「お父さん、ベニヤミンに何かあったらわたしの2人の子供の命をとってください。必ずベニヤミンを連れて帰ります」

「だめだ、ベニヤミンに何かあったらわたしはもう生きてはいけないだろう」

ヤコブはこれ以上息子を失う悲しみを味わいたくありませんでした。

そのうち、エジプトから買ってきた食料が少なくなってきました。

「おまえたち、エジプトへ行ってまた食料を買ってきなさい」

「ベニヤミンも一緒でなければ買いにいけません。あの方は末の弟を連れてこなければ来てはいけないと言いました」

「何故おまえたちはベニヤミンの事を話したんだ、なぜわたしを辛い目にあわせるんだ」

ヤコブは息子達と押し問答をしていました。

「あの人に家族の事を色々聞かれたからです。まさか弟を連れてこいと言われるとは思いませんでした」

「どうか、ベニヤミンを連れて行く事を許してください、わたしが責任を持ちます、必ずベニヤミンを連れて帰ってきます」

ヤコブはしばらく考え込みましたが、やがてゆっくりとこう言いました。

「ベニヤミンを連れていきなさい。ただし、この国の名産を手土産にもっていきなさい。そして二倍の額の銀を持っていき、さらに袋に入っていた銀は返してきなさい。きっとそれは手違いなのでしょう」

「どうか、全能の神様がその人の前であなたがたをあわれみ、シメオンとベニヤミンを返させてくださるように」

ヤコブには族長としての責任がありました。ベニヤミンは行かせたくはありませんでしたが、最後はこの事は神様に委ねて祈りました。

ヤコブの決断は、深い信仰に裏打ちされたものでした。彼は悲しみと葛藤の中で、最終的に神様にすべてを委ねる道を選びました。

● ベニヤミンとの再会

 彼らがベニヤミンを連れて再びエジプトへ戻ってきました。ヨセフはベニヤミンが一緒にいることを確認すると、彼らを自分の家へ招待しました。

招待された兄弟達は何故ヨセフの家へ連れられたのだろうと不安になりました。

「きっと袋に戻ってきた銀のことでだ」

「奴隷にされてしまうに違いない」

「ロバも奪われるに違いない」

そして、ヨセフの家の支配人に恐る恐る言いました。

「最初に買った食料の袋に代金の銀が入っていました。何故これが入っていたのかわかりませんがお返しします。代金の銀も別に二倍用意しました」

「安心してください、代金は確かに受け取りましたよ、それはあなたがたの神様がくださったのでしょう」

きっと罰を受けるだろうと思っていたのに、あれだけ悩んだのは何だったのだろう、あぁ、どうかこのまま無事帰れますように。

祈る気持ちでいると、シメオンが解放され、彼らのところへ戻ってきました。よかった、疑いは晴れたんだ、無事に帰れる。不安と緊張感で強張っていた身体から力が抜けていきました。

あとからヨセフも家へ戻って来ました。そして色々と話しかけました。

「あなたがたの父はお元気ですか?」

「この子があなたがたの話していた末の弟ですか?」

兄弟達はヨセフに問われるままに全て答えました。

ヨセフは懐かしいベニヤミンの顔を見て心にいろいろな気持ちがこみあげてきました。

「わが子よ、どうか神様があなたを恵まれるように」

そして涙をこらえながら誰もいないところへ行き、泣きました。

そして何食わぬ顔でもどって「さぁ、食事にしよう」といいました。

当時、エジプト人は宗教的・文化的な違いから他国の人と食事をする事を好みませんでした。エジプト人として振る舞うヨセフは一緒に食事をするために、ヨセフの兄弟達のテーブル、エジプト人のテーブルをそれぞれ分け、ヨセフは自分だけのテーブルを用意させました。

ここで彼らはとても驚きました。それぞれ指定された席が兄弟の年齢順になっていたからです。

ルベン
シメオン
レビ
ユダ
ダン
ナフタリ
ガド
アシェル
イッサカル
ゼブルン
ヨセフ
ベニヤミン

また、ベニヤミンが特別扱いされ、他のどの兄弟よりも沢山の料理が出されました。

ヨセフは自分の正体のヒントを出していましたが、エジプト人のように振る舞い、距離をとっていたため、兄弟達はヨセフだと気が付く事ができませんでした。

こうして、彼らはヨセフとの食事を楽しみました。

● 信仰と悔い改めの歩み

 ヨセフの物語を通じて、神様がどのように人々の心と人生を変えられるかを深く学ぶことができます。ヨセフは、どんな試練の中でも信仰を失わず、神様に全てを委ねました。彼は与えられた役割に忠実に生きることで、異国の地で大きな使命を果たし、神様のご計画に用いられる者となりました。

一方、ヤコブは息子たちを失う悲しみと、家族を守りたいという強い思いの間で葛藤しました。彼が最終的に愛するベニヤミンを神様に委ねる決断をしたのは、深い信仰に基づくものでした。

また、兄弟たちもまた、かつてヨセフに対して犯した罪を思い起こし、悔い改める道を選びました。

ヨセフのように忠実に生きること、ヤコブのように信仰を持つこと、兄弟たちのように悔い改めること。それぞれが、神様のご計画の中で欠かせない要素です。

私たちもまた、人生の中で試練や葛藤に直面します。試練の中で神様に信頼することができるでしょうか? 自分の中の葛藤や罪と向き合い、悔い改める心を持っているでしょうか?

私たちが神様の導きを信じ、与えられた使命を受け入れて歩むとき、神様は一人ひとりの人生の中でご計画を成就してくださいます。今日からの歩みを、神様に委ね、祈りつつ進んでいきましょう。