● 幸せな家庭から奴隷へ
ヨセフはお兄さん達に売られ、エジプトへ連れてこられました。そして、エジプトの王様パロの役人で、侍衛長のポティファルに買われます。聖書にはエジプトの王様は「パロ」と書かれていますが、現代の呼び方では「ファラオ」として有名ですね。私も子供の頃は知らず、大人になってから知った時は驚きました。面白いですね。
奴隷として買われたヨセフでしたが、神様はいつでも彼と共におられ、守り支えてくださいました。ヨセフが行うことはすべて良い結果をもたらし、その働きぶりを見たポティファルは彼を非常に信頼し、家の中の全ての管理を任せました。ヨセフがあまりにも有能であったため、ポティファルは「今日は何を食べようかな」などの食事について以外は、心配することなく全てをヨセフに任せるようになりました。
神様は、ヨセフとポティファルの家を祝福され、恵みは家の中だけでなく、家の畑や持ち物にまで及びました。
ヨセフは本来、お兄さん達に売られてエジプトで奴隷とされた可哀そうな人です。しかし、聖書はそのことについてあまり触れず、神様がヨセフと共におられ、彼とその家に祝福が与えられたことを強調しています。ここで大切なのは、神様が共にいてくださり、祝福がもたらされていることです。私たちも、たとえ困難な状況にあっても神様と共に歩むなら、どんな場所でも幸せに変えられることを覚えたいと思います。
● 幸せな奴隷から囚人へ
ヨセフは現代風に言えば、目を引くほどの美しい容姿をしていたのでしょう。すらりとした体格で、きっと品のある顔立ちだったのだと思います。現代にいたらスカウトされてモデルやアイドルになっていたかもしれません。そんなヨセフに惹かれたのが、彼の主人であるポティファルの奥さんでした。
「ヨセフ、お仕事は置いといて、ちょっと私とお話しましょう」
「いいえ、ご主人様は家の事を全て任せるほどに私を信頼してくださいました。その信頼を裏切って、神様の前に罪を犯すことはできません」
このように、ポティファルの奥さんは毎日のようにヨセフに近づき、誘惑しようとしました。しかし、神様を信じ、誠実であろうとするヨセフは、彼女から距離を置くようにし、一緒にいることを避けました。
ある日、ヨセフが仕事をしているとき、周りに誰もいないことをよいことに、ポティファルの奥さんが近づき、ヨセフの上着を掴んで引き留めようとしました。ヨセフはその場を逃れようと、自分の上着を残して外に走り去りました。
自分の誘いを断られ続けたポティファルの奥さんは、悔しさと怒りのあまり泣き出しました。
「おい、どうしたんだ?」
駆けつけたポティファルに、彼女は言います。
「あのヘブル人が私にひどいことをしようとしたので、大声で叫んだら逃げていきました。この上着がその証拠です」
こうして、ポティファルの奥さんの嘘によって、ヨセフは何も悪いことをしていないのに、牢屋に入れられてしまいました。
ヨセフはお兄さん達に売られて奴隷となり、主人の奥さんに嘘をつかれて牢屋の囚人とされてしまいました。彼の人生は私たちから見れば非常に不運に思えます。何も悪いことをしていないのに、どうしてこんな試練にあわなければならないのでしょうか?
しかし、ヨセフは神様のご計画の中にあり、神様は彼と共におられました。神様の計画には、ヨセフが果たすべき重要な使命が含まれており、ポティファルの家に仕えるだけではその使命は実現しないものでした。神様は人間の思惑を超え、彼の計画を進められます。
また、幼い頃のヨセフは、神様から見せられた夢を無配慮に語り、お兄さん達を怒らせる一面がありました。神様は彼を訓練し、気配りや忍耐を身につけさせるために、このような厳しい境遇におかれたのかもしれません。
牢屋に入れられてしまったヨセフですが、そこでも神様はヨセフと共にいてくださりました。そんな彼は牢屋の番人である獄屋番にも信頼され、牢屋にいる全ての囚人の管理を任せられました。
● 2つの不思議な夢
牢屋でいつものようにヨセフが仕事をしていると、獄屋番がやってきて言いました。
「新しくやってきた2人がいる。彼らの世話もしてやってくれ」
やってきたのは、料理役と給仕役でした。料理役は王様の食事を作る料理人の長であり、給仕役は王様に飲み物を差し出す役割で、飲み物を管理したり毒が入っていないか確認する、王様にとても近い役職の人です。
彼らは仕事で失敗して王様の怒りを買い、ヨセフのいる牢屋に入れられてしまいました。
ヨセフはポティファルからの命令で、この2人を牢屋でお世話することになりました。
ある日、料理役と給仕役は深刻そうな顔で話し合っていました。
「どうしたんですか?」
「あぁ、昨日不思議な夢を見たんだが、どうしてもその意味がわからないんだ。2人でどういう意味だろうと話していたんだよ」
ヨセフはそれを聞いてこう答えました。
「それなら私にその夢を話してください。神様がその夢の意味を教えてくださるかもしれません」
「それならまず私の夢を聞いてくれ」
給仕役が自分の見た夢をヨセフに語りました。
「私の目の前に立派な葡萄の木があった。その葡萄の木には3本の枝があって、そこから芽が出て花が咲き、葡萄のふさが熟したんだ。それで、その葡萄を絞って、杯をパロに捧げたんだ」
ヨセフは夢の意味を語りました。
「神様が夢の意味を教えてくださいました。3本の枝は3日です。あなたは3日後に赦されて元の仕事に戻れるでしょう」
「もし元の仕事に戻れたら、王様に私のことを話して、ここから出られるようにお願いします。私はヘブル人でさらわれてエジプトへ来ました。そして無実の罪でこの牢屋にいます」
「あぁ、わかった。必ず王様に伝えよう」
「次は私の番だな。私の夢を聞いてくれ」
料理役は、給仕役の夢の意味がとてもよかったので、期待しながら夢を語りました。
「私は頭の上に3つのカゴを乗せていて、パロのために作った料理が入っていたんだが、鳥がそれをみんな食べてしまった」
ヨセフは夢の意味を語りました。
「3つのカゴは3日を意味します。残念ですが、パロはあなたの命を取られることになるでしょう」
3日後になりました。その日はパロのお誕生日でした。
夢の解き明かしの通り、給仕役は元の仕事に戻り、料理役は命を取られました。
給仕役は元の仕事に戻れましたが、ヨセフに頼まれていたことをすっかり忘れてしまい、ヨセフはさらに2年間、牢屋の中にとどまりました。
夢の解き明かしは神様がその意味を教えてくださる、というヨセフの神様に対する信頼からくるものでした。ヨセフには夢を解き明かす力はありませんが、神様に信頼して答えを求めるなら、神様はそれに応えてくださると信じていたのです。
この出来事も神様の計画の一部でありましたが、ヨセフはすぐに助け出されることはなく、さらに2年間の試練が続くこととなりました。神様の計画が成就する時が、まだ先にあったのです。
● パロの夢
給仕役と料理役の事件から2年が経ち、ある夜、パロは不思議な夢を見ました。
ナイル川のほとりに立っていると、大きく太った7頭の牛が川から上がり、草を食べ始めました。しばらくすると、今度は痩せ細った7頭の牛が川から上がり、なんと太った牛たちを飲み込んでしまったのです。
驚いて目が覚めたパロは再び眠りにつきましたが、また夢を見ました。1本の茎から7つの良く実った穂が出てきたのです。すると、東風に焼けた7つの痩せた穂が現れ、良く実った穂を飲み込んでしまいました。
「東風」は、エジプトや中東で時折砂漠から吹く厳しい乾燥した風です。この風は作物に深刻な被害をもたらし、「東風に焼けた」とは、穀物がこの乾燥した風によって枯れてしまった状態を意味しています。
夢の内容が気になったパロは、国中の学者や魔術師を呼び寄せて夢の解釈を求めましたが、誰もその意味を解き明かすことができませんでした。
「どうして誰もこの夢を解き明かせないのか!他に解き明かしができる者はいないのか!」
その様子を見ていた給仕役は、ヨセフのことを思い出しました。
「王様、2年前、私と料理役が牢に入れられたとき、夢を解き明かしてくれたヘブル人がいました。彼の解釈通り、私は元の職に戻り、料理役は命を取られました」
「なぜそれを早く言わないのだ。そのヘブル人をここへ連れて来なさい!」
こうして、ヨセフはついに牢屋から出され、髭を剃り、身なりを整えてパロの前に立ちました。
「わたしは夢を見たが、誰もその意味を解き明かせる者がいなかった。あなたなら夢を解き明かせると聞いたがどうなのだ?」
「いいえ、夢を解き明かしてくださるのは神様です。神様が王様の不安にお答えくださるでしょう。どうかその夢をお話しください」
パロは、ヨセフに7頭の牛と7つの穂の夢を話しました。ヨセフは神様から示された夢の意味を伝えます。
「この2つの夢は同じ意味です。神様がこれから起こることを王様にお示しになりました。7頭の太った牛と7つの良い穂は7年、7頭の痩せた牛と7つの東風に焼けた穂も7年です。最初の7年はエジプトに大豊作があり、その後の7年には飢饉が来て、国中を苦しめるでしょう」
「王様が2度同じ夢を見られたのは、神様がそのことを早急に行われると定められたからです」
「賢い人を立て、この国を管理させるべきです。7年の豊作の間に収穫の5分の1を蓄え、飢饉に備えるようにすれば、この国は助かるでしょう」
パロはヨセフの言葉を聞き入れ、こう言いました。
「あなたのように、神様の霊と共にいる人は他にはいないでしょう。神様がすべてのことをあなたに示されたのだから、あなたほど賢い人はいない。どうかこの国を管理してください。わたしは王であるということのみ、あなたに勝ることとします」
「あなたをエジプト全国のつかさとする」
こうして、ヨセフはエジプトの支配者となり、7年間の豊作の間に収穫した穀物を蓄えました。その量は海の砂のように多く、ついには計りきれなくなりました。
● 神様の計画に答える心
ヨセフは神様のご計画の中で、どんな境遇にあっても神様を信頼し、最後には国を管理する高い地位に引き上げられました。彼はパロの前でも「解き明かしは神様から来る」と人間の力ではなく神様の力を強調しました。もしヨセフが慢心し、神様の力ではなく自分の力に頼っていたなら、道を踏み外していたかもしれません。
ヨセフはその後、2人の子供にマナセとエフライムと名付けました。「マナセ」は「神様が苦しみを忘れさせてくださった」という意味、「エフライム」は「神様が実り豊かにしてくださった」という感謝の意味です。
神様の計画には試練と祝福の両方があります。私たちは神様からの試練に備え、どんな時でも神様を第一にし、日々の幸せを試練に備える力とする心構えを持ちましょう。
神様に導きと備えを求め、幸せな時にもしっかりと準備していけるようお祈りしましょう。