● ヤコブの子ヨセフ

ヨセフはヤコブが年老いてから生まれた、念願の妻ラケルとの間に生まれた息子で、ヤコブは特にヨセフのことを大事にしていました。

そんな大事な大事なヨセフですから、お父さんのヤコブは長い袖の特別な服をつくってあげました。この服は、仕事をする人が着るものではなく、偉い人が着るもので、ヤコブはヨセフを特別な存在として可愛がっていました。

その特別扱いに対して、嫉妬し妬む人たちがいました。それはヨセフの10人のお兄さんたちです。 兄弟たちは、ヨセフが他の兄弟よりも愛されていることを見て、憎むようになり、辛くあたるようになりました。

ヨセフはお父さんのヤコブの影響で、誠実で正義感の強い子に育ちました。彼は神様を信じ、神様と共に歩む信仰心を持っていたため、お兄さんたちが悪いことをしていると、お父さんのヤコブに報告していました。特に可愛がられていたヨセフは、神様の前で正しく生きることが大事であり、不正を見逃すことはできなかったのです。

● ヨセフの夢と信仰

 ヨセフは不思議な夢を見ました。その夢を、お兄さんたちに話します。

「お兄さんお兄さん、聞いてよ。昨日、こんな夢を見たんだ。麦畑で束を作っていたら、僕の束とお兄さんたちの束が起き上がって、お兄さんたちの束が僕の束におじぎをしたんだよ。」

お兄さん達はその話を聞いて面白くありませんでした。

「おい、ヨセフ。お前が俺たちの王様になるのか?俺たちがそんなことをするわけないだろう!」

ヨセフはまた別の夢を見て、今度はお父さんのヤコブとお兄さんたちに話しました。

「お父さん、お兄さん、聞いてよ。昨日、こんな夢を見たんだ。太陽と月と11の星が僕におじぎをしてきたんだ。」

これを聞いたお父さんのヤコブはびっくりしました。太陽はお父さんのヤコブ、月はお母さん、11の星はヨセフの兄弟たちを象徴していたからです。

「ヨセフ、お前はなんて夢を見たんだ。わたしとお前のお母さん、お前の兄弟たちがお前におじぎをするというのか?」

お兄さんたちはますます怒り、ヨセフに対する敵対心が強くなっていきました。

ヨセフの夢には神様からの意味が込められていました。神様はヨセフに、将来の使命を示すために夢を通して啓示を与えられました。しかし、兄弟たちはその夢を理解せず、嫉妬心と憎しみに駆られてしまったのです。

● 嫉妬と怒り

ヨセフの夢が兄弟たちにとって屈辱的に感じられ、彼らはヨセフに嫉妬し、怒りを感じました。しかし、その嫉妬と怒りの根源は、自分たちが愛されていないと感じる寂しさから来ていたのです。

嫉妬や怒りは、心の寂しさが生み出す感情です。私たちも、他人が特別に愛されているように感じたとき、自分が見捨てられていると感じ、嫉妬や怒りに駆られることがあります。しかし、そのようなときこそ、私たちは神様が全ての人を等しく愛しておられることを心に刻むべきです。神様の愛は全員に注がれており、誰一人として取り残されることはありません。

● 慎重さの重要性

「能ある鷹は爪を隠す」という日本のことわざが示すように、自分に与えられた特別な恵みや才能をひけらかすことなく、慎重に行動することが大切です。ヨセフは、特別な夢を通して神様から恵みを受けていましたが、兄弟たちに対する配慮が欠けていたかもしれません。彼の夢がどのように兄弟たちに伝わり、それがどう受け取られるかを慎重に考えることが必要でした。

私たちも、神様の恵みや祝福を他者に伝えるときには、相手の気持ちに配慮し、慎重に言葉を選ぶ必要があります。私たちの言葉が他者を傷つけたり、誤解を生んだりしないようにすることが、神様の恵みを正しく伝えるために重要です。

● ヨセフの災難

 さて、ヨセフのお兄さん達はシケムというところでヤコブの羊のお世話をしていました。

ヤコブはヨセフを呼んでこう言いました。

「ヨセフや、シケムへ行って様子を見てきておくれ。わたしの息子達や羊の群れ達か無事かどうか確認してわたしに教えておくれ」

「わかりました、お父さん、行ってきます!!」

ヨセフは早速出かけますが、シケムにはお兄さんたちはおらず、通りがかった人に教えられてドタンへ向かいます。

そしてお兄さん達を見つける事ができました。お兄さん達も遠くから走ってくるヨセフにすぐ気が付きました。

「おい、見ろよ。夢見るヨセフがやってきた!」

「ははは、俺たちのご主人様がいったい何をしに来たんだろうな。」

「そこの枯れた井戸に放り込んでやろう。それから、父さんには獣に襲われたと伝えればいい。ヨセフの夢がどうなるか、見物だな!」

ヨセフはやっとお兄さんたちの元へたどり着きましたが、突然襲われ、長袖の上着を奪われ、そのまま枯れた井戸に投げ入れられました。

「お兄さん、なにするの!出して!助けて!」とヨセフは叫びましたが、井戸の底から自力で出ることはできませんでした。

ルベンは後でこっそりヨセフを助け出してお父さんのヤコブのもとへ帰すつもりでいました。

「ヨセフ、すまない、後で助けてやるからそこで待ってるんだぞ」

ルベンは、ヤコブがヨセフをとても愛していることを知っており、彼を助け出すつもりでいました。しかし、ルベンがその場を離れた間に、他の兄弟たちは別の相談を始めました。

「ヨセフをここに放っておいても何も得しない。商人が通りかかるぞ、あいつを売り飛ばしてしまおう。手を汚さずにすむし、少し金も入る。」

こうして、ヨセフは通りかかったイシュマエル人の商人に銀20シケルで売られ、エジプトへ連れて行かれてしまいました。そして兄弟たちは、ヤギの血でヨセフの上着を汚し、父ヤコブにそれを見せるつもりで家に帰ります。

● ヤコブの悲しみ

 ルベンが戻ってきましたが、井戸の中にはヨセフがいませんでした。

「ヨセフ!ヨセフ!おい、返事をしてくれ!」と何度も叫びましたが、ヨセフの声は聞こえません。やがて、ヨセフがいなくなっていることに気づき、兄弟たちに問いただしました。

「お前たち、あの子を、あの子をいったいどうしたんだ、ヨセフがいない!!」

「さあな、これを見ろよ、ヨセフの服が血まみれだ、きっと獣に襲われたんだろう」

ルベンはそれを見てショックを受け、「なんということだ…」と嘆きましたが、兄弟たちは何も言わず、獣に襲われたことにする計画を進めました。

家に戻った兄弟たちは、血まみれの服を父ヤコブに見せました。

「お父さん、この服を見つけました。これはヨセフの服ではないでしょうか?」と兄弟たちは言います。

ヤコブはその血まみれの服を見て、震えながら言いました。「これは確かにわたしの息子の服だ。ああ、なんてことだ!かわいそうに、ヨセフは悪い獣に襲われてしまったに違いない!」彼は深く嘆き、悲しみに暮れました。

「ヨセフ…お前がいないなんて…」

ヤコブは自分の衣服を裂き、荒布を腰に巻き、長い間、長い間ヨセフのために泣きました。彼は「わたしは墓に行くまで、この悲しみから立ち直ることはない」と言い、息子や娘たちが何度も慰めようとしましたが、彼の悲しみは癒えることはありませんでした。

兄弟たちも、この時点で父ヤコブがここまで嘆き悲しむとは予想していなかったかもしれません。彼らは、一時の感情に任せた行動が、取り返しのつかない結果をもたらしたことに気づきましたが、すでに遅すぎました。

● 神様のご計画

ヨセフの物語は、悲劇的な事件から始まります。

兄弟たちによって憎まれ、売られてしまい、エジプトへと連れ去られました。しかし、この出来事は、神様のご計画の一部でした。

兄弟たちはヨセフに手をかけようとしましたが、神様はその行為を許されず、ヨセフの命を守られました。そして、神様の導きによって、ヨセフはイシュマエルの商人に売られました。

ヨセフにとっては、確かに辛い出来事でした。しかし、これもまた神様の大きなご計画の一環でした。

神様はヨセフに目を留め、彼を祝福され、将来のために必要な試練を与えられました。

ヨセフは、その試練の中でも神様への信仰を持ち続け、神様と共に歩む人でした。そして神様は、そんなヨセフを常に守られました。

わたしたちの人生も、時には予期せぬ試練や困難に直面することがあります。

私たちも、神様のご計画の中で生きているのです。困難な時でも、その中に神様の目的があると信じることで、私たちは希望を持ち続けることができます。

私たちが試練に直面した時、その試練にうまく対応できず、失敗することもあるでしょう。それでも、神様は決して私たちを見放されません。

むしろ、神様は忍耐強く、私たちが成長し、信仰を深めるのを見守ってくださいます。

また、時に私たちは神様の助けに気づかないこともありますが、後から振り返ってみると、「ああ、これは神様がわたしを助けてくださったのだ」と気づくことがあるかもしれません。その時、自然と心の中に感謝の気持ちが湧いてきます。

信仰とは、ただ一度感じれば終わりというものではありません。何度も試練や失敗を経験する中で、再び信仰の原点に立ち返り、神様と共に歩むことが大切です。

そして、毎日の生活の中で、神様が共にいてくださることを心に受け入れながら進んでいければと思います。