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● エジプトへの定住
お父さんのヤコブとついに再会できたヨセフは、ヤコブ一族と羊飼いを忌み嫌うエジプト人との間の摩擦をさけるため、職業を聞かれたら「羊飼い」ではなく「家畜の牧者」と羊に限定しないようにし、また、エジプトの中心地から少し離れたゴセンの地に彼らが住む事ができるよう取り計らいました。
● 強大になってゆくエジプト
飢饉はますます厳しさを増し、エジプトの民はついに食料を買う銀が尽きてしまいました。
「食料をください!私たちにはもう銀はありません。」
銀がないので代わりに家畜と引き換えに食料を手に入れ、その年はなんとかしのぎました。
そして次の年になり、
「私たちの銀も家畜もすべてなくなりました。残っているのは私たち自身と土地だけです。どうか私たちと土地を買い取って、食料をください!そうすれば私たちは死なずに済みます。畑も荒れることがありません。」
こうして、ほぼすべての土地がパロの所有となり、人々は「パロの奴隷」となりました。しかしヨセフは、単に土地を買い取るだけでなく、人々が生き延びるための方法を提供しました。
ヨセフは人々に種を与え、こう命じました。
「土地に種をまきなさい。そして収穫が得られたら、その五分の一をパロに納め、残りの五分の四は自分たちの食料や種として使いなさい。」
こうして、人々は命を守られ、エジプトはその国力をますます強大なものとしていきました。
● ヤコブとの誓い
イスラエルの一族の長であるヤコブは、エジプトに来て17年生きました。彼は自分が死ぬ前にヨセフを呼びました。
「あなたの手をわたしのももの下に入れて誓ってください。わたしをエジプトではなくわたしの先祖達が眠る墓に葬ってください」
ももの下に手を入れるという行為、何も知らずにここを読むと「ひゃぁ、くすぐったい!」って気持ちになりそうですが、当時の古代中東では厳粛な誓いの儀式で、とても重要な誓いをたてる時に用いられていました。
ももや腰という部位には象徴的な意味が含まれていて、子孫や繁栄を象徴していると考えられていました。家系や血筋の中心として「腰」が強調され、誓いをたてる時にこの部位にふれることで約束が「家系全体に関わる重要な事項」であることを示していました。
この誓いは創世記24章3節でアブラハムがイサクのお嫁さんを探させる時にも同じ方法で誓いを立てさせています。
ここではアブラハムのしもべがイサクの妻を探す際、「ももの下に手を入れて誓わせた」ことで、誓いが単に個人間の約束ではなく、アブラハムの家系全体に関わるものとされていると考えられます。
ヤコブは自分が「エジプトの地ではなく、先祖たちが眠る地(マクペラの洞窟)」に葬られることを強く望んでいました。これにより、神がアブラハム、イサク、ヤコブに約束されたカナンの地が、イスラエルの真の故郷であることを象徴したいと考えました。
ヨセフに誓いを立てさせたことで、この約束が単なる父子間の願いではなく、神の約束と歴史的な使命に根ざしたものとして強調されました。
● 後のものが先になる
ヨセフは、2人の息子、長男マナセと弟エフライムを父ヤコブのもとに連れて行きました。ヤコブは年老いており、ほとんど寝床に伏せたままの生活をしていましたが、この特別な時のために力を振り絞り、座り上がってヨセフとその子たちを出迎えました。
「ヨセフ、そこにいるのは誰だい?」
「神様が私に与えてくださった子供たちです。」
「そうか、その子たちを祝福してあげよう。さあ、こちらへ連れてきなさい。」
ヤコブは目がほとんど見えなくなっていました。ヨセフは、長男のマナセをヤコブの右手側に、弟のエフライムを左手側に導きました。右手は祝福において特に重要な手とされていたため、ヨセフは長男のマナセにより大きな祝福が与えられるようにと配置を考えたのです。
しかし、ヤコブは両手を交差させ、右手を弟エフライムの頭に、左手を長男マナセの頭に置きました。そして祝福の言葉を語り始めました。
「ヨセフよ、お前の顔を見ることはもうないと思っていた。しかし、神様はお前の子供たちも私に見せてくださった。」
この言葉を聞きながら、ヨセフは父の思いを深く受け取りましたが、同時に父が長男マナセではなく弟エフライムに右手を置いていることに気づきました。ヨセフは慌てて言います。
「お父さん、違います!右手を長男マナセの頭に置いてください。」
しかし、ヤコブは静かに首を振り、こう答えました。
「ヨセフよ、わかっている。兄は大きな国民となるだろう。しかし、弟はさらに大いなるものとなり、多くの子孫の国民となるのだ。」
この出来事は、聖書全体に流れるテーマ、「後のものが先になる」現象を象徴しています。アベルの捧げ物がカインよりも受け入れられ、ヤコブがエサウに先んじて祝福を受け、ダビデが兄たちを差し置いて選ばれたように、神様はしばしば人間の常識や順序を覆し、ご自身の計画を実現されます。
ここでのヤコブの行動は偶然ではなく、神様の導きによるものでした。弟エフライムがマナセを上回る祝福を受けることは、神の意図に基づくものであり、後のイスラエルの歴史においてもエフライム族が指導的な役割を果たすことを予告していました。
祝福の後、ヤコブはヨセフに向かって遺言のように語ります。
「わたしはやがて死にます。しかし、神はあなたがたとともにおられ、あなたがたを先祖の地へと導き返されるだろう。そして、わたしは一つの分を兄弟たちよりも多くあなたに与える。それは、わたしが剣と弓を持ってエモリ人の手から取った山地である。」
ヤコブは自分の死が近いことを悟りながらも、神がその約束を成し遂げられることを確信していました。ヨセフへの特別な割り当ては、彼がエジプトで家族を救った役割を反映し、またヨセフの子、エフライムやマナセの子孫が未来のイスラエルで果たす重要な役割を予告しています。
この予言は単なる家族間の遺産分けではなく、神の約束の地カナンへの帰還を指し示しています。そしてこのヤコブの言葉は、聖書の次の大きな物語「出エジプト記」へと繋がっていきます。ヤコブの信仰の視点は、自分の死を超えた未来、つまり神がイスラエルの民に約束を果たされる壮大な計画を見据えていました。
● ヤコブの祝福
ヤコブは息子たちを集め、最後に彼らを祝福しました。この祝福は、それぞれの息子の性格や過去の行いに基づいたものですが、単なる言葉以上に、未来のイスラエル12部族の運命を予告する重要なものでもあります。
ヤコブは息子たち一人ひとりに目を向け、神様が計画しておられる道筋を語りました。12人それぞれに特別な役割があり、神様のご計画の中で用いられるのです。
【1. ルベン(長男)】
ルベン、あなたは私の最初の子で、本来は家族を引っ張るべき立場だった。しかし、あなたの不安定な性格と過去の失敗(父の側女ビルハとの関係)がその地位を失わせた。リーダーシップを持つべき立場だったが、その期待を果たせない。
【2. シメオンとレビ】
シメオンとレビ、あなたたちは一緒になるととても危険だ。怒りに任せて暴力的なことをしてきた(シケム人を皆殺しにした事件)。その行動は家族全体を危険にさらした。だから、あなたたちの子孫はイスラエルの中で分散されるだろう(レビ族が祭司として土地を持たず、シメオン族が土地を他の部族に吸収される)。
【3. ユダ】
ユダ、あなたは兄弟たちの中でリーダーとしてたたえられる。あなたの家系から王が生まれ、権威が続くだろう。この約束はダビデ王家、さらにはメシア(イエス・キリスト)につながるものだ。
【4. ゼブルン】
ゼブルン、あなたの子孫は海辺の近くに住み、海上貿易や商業活動で栄えるだろう(実際には直接の海岸地帯ではなかったが、海上活動との関係があったとされる)。
【5. イッサカル】
イッサカル、あなたの部族は農耕などの労働を愛し、働き者だ。しかし、その勤勉さのために支配されやすく、他人に利用されることもあるだろう。
【6. ダン】
ダン、あなたの子孫は正義を守る役割を果たすが、時には陰湿な策略を使うこともある(士師サムソンがダン族出身)。
【7. ガド】
ガド、あなたの部族は敵に襲われやすい場所に住むが、最後には反撃して勝利を収める。
【8. アシェル】
アシェル、あなたの部族は土地が豊かで、豊富な食糧を生産する。王族の食卓を満たすほどの美味しい食材を供給するだろう。
【9. ナフタリ】
ナフタリ、あなたの部族は自由で、表現力に富み、美しい言葉や詩的な賛美で知られるようになるだろう。
【10. ヨセフ】
ヨセフ、あなたは試練を乗り越え、多くの実を結ぶ人生を送った。あなたの子孫も神の祝福を受けて成長し、豊かさを象徴する存在となる。
【11. ベニヤミン】
ベニヤミン、あなたの部族は戦闘力が高く、戦いの中で成功を収める。行動力と攻撃的な性格で知られるだろう。
これらの言葉は、それぞれの息子が将来どのような特徴を持ち、部族としてイスラエル全体の中でどのような役割を果たすかを予告しています。ヤコブが子どもたち一人ひとりに対して個性や未来を考えながら語ったことがよくわかります。
ヤコブは最後に、ヨセフに言ったように、他の兄弟たちにも自分をエジプトではなくカナンの地のマクペラの畑にある洞穴、先祖たちが眠る地に葬るように伝えました。そして、息を引き取りました。
ヤコブは若い頃から何度も失敗をし、苦労を重ねてきましたが、神様のご計画に導かれ、最後には神様の民の一人としてその使命を全うしました。彼の祝福の言葉から、私たちもそれぞれ神様の計画と目的を持って生かされていることを思い出すことができます。
神様の計画は私たちの過去や弱さに関わらず、永遠に成就するものです。ヤコブの祝福の中で働いていた神様の恵みは、今も私たちの人生に働いています。
● ヨセフ物語
ヨセフの物語は、彼自身の生い立ちや試練、最終的な成功だけにとどまらず、ヤコブ一族全体に焦点を当てた壮大な物語です。一族それぞれが神様との関係性を持ち、試練や葛藤を通じて成長し、最後には神様のご計画の中で重要な役割を果たしていきます。
この物語は、私たちにも多くの学びと教訓を与えてくれます。
- 試練の中でも信仰を持つ
- 赦しの実践
- 神様の計画の一部として生きる
何度も聖書を読み返し、この物語に込められた神様の意図を味わうことで、私たちの信仰も豊かにされます。そして、神様が私たち一人ひとりをその計画の中でどのように用いられるのかを期待しながら生きることができます。この物語を心に刻み、試練の中でも神様の導きを信じ、赦しと和解を実践しながら歩んでいきましょう。